研究紹介

Perf-labでは、クラウドコンピューティング基盤から、FPGAを使った専用コンピュータ、夢の未来の新奇コンピュータ(脳型計算、近似コンピュータ)まで、あらゆるコンピュータとそれらで動作するソフトウェアの研究をしています。手のひらサイズのシングルボードコンピュータから、ラックマウントサーバーやデータセンター、更には、スーパーコンピュータ富岳の規模まで、プログラミング・ソフトウェア開発環境やコンピューティング基盤を設計しアプリケーション評価するというアーキテクチャを研究します。未来のコンピュータを想像するべく、応答速度や性能、電力効率システムレベルの生産性やコスト使い勝手に関する諸問題に取り組んでいます。


“超分散コンピューティングのための実行コード最適化技術”

クラウド環境向けドメイン特化型プログラミング環境の研究

ポスト5G通信基盤により基地局まで1msオーダーの超低遅延と多数のデバイスの同時接続性が実現する時代が間もなく実現される見込みです。ローカルデバイスからクラウドコンピューティング環境にシームレスに接続されることにより、スマートモビリティやスマートシティを始めとする多様な産業用途への活用が期待されています。一方で、ポスト5G通信基盤の先にある超分散コンピューティング環境も低遅延性と同時接続性に対応する必要があります。クラウド上や基地局に分散される計算機リソースからなる超分散コンピューティング環境を構成するリソースは多様化しており管理が課題となっております。

我々は、このような超分散コンピューティング環境のシステムインフラの課題を高性能プログラミングの知見を最大限に活用して解決することに取り組みます。具体的には、超分散コンピューティングのための実行コード最適化技術として、分散環境向けの新発想ドメイン特化型言語(DSL)の開発や、低遅延性・高QoS・高生産性を実現する言語処理系の構築、実行時の性能バグの監視や実行コードの持続的進化を可能とする技術の開発に取り組んでおります。

共同研究先リンク 産総研 超分散コンピューティング研究チーム


“Programming CPUs, systems and everything in technology, science and art.”

CPUから技術、科学、芸術までもプログラミング

Perf-labでは、コンピュータアーキテクチャの神髄であるソフトウェアとハードウェアの界面(インターフェース)を探求していきます。そのために、CPUをマシン語(アセンブリ言語)、C言語、Python、ドメイン特化型言語など様々な抽象度の言語を用いてプログラミングしていきます。プログラミングの対象も、CPUだけではなく、単体コンピュータ、更には、大型コンピュータ、スパコン、IoT機器、エッジデバイスなど情報技術を活用するもの全てに及んできます。 コンピュータの使える技術を学び、最終的には科学として昇華させる。最初の一歩は、楽しそうだから試してみよう・作ってみようからプログラミングがスタートします。作ってみたいアイディアが実現でき、あるフィールドの実践知となれば、その美しさに共感しあえる仲間ができます。このとき、プログラミングはアートの領域に到達しているかもしれません。その少し先に、きっと、まだ見ぬコンピューティング技術、コンピュータ科学が存在していると思います。Perf-labでは、様々な角度から、プログラミング、そして、コンピューティングの技術・科学・アートを探求し、実践していく研究を目指しております。


“宇宙機に搭載し自律動作の頭脳となる超高速・低電力コンピュータ”

宇宙で使える超効率的コンピュータの研究

超小型人工衛星の普及や民間企業の製造した宇宙船での有人飛行に成功するなど、近年、宇宙に関する技術が急速に進化しています。さらに高度な宇宙空間での宇宙船や宇宙機の運用のためには、高い次元の宇宙機の自律化が求められています。そのため、自律化の基盤となる人工知能技術に基づく処理をリアルタイムかつ高信頼に計算し、宇宙空間で利用可能な厳しい電力の制約を満たすコンピュータ技術が求められています。本研究室では、宇宙機の自律化に必要なアルゴリズムのリアルタイム処理が20ワット以下の消費電力で実現できるような専用コンピュータをFPGAにより実装することを目指し、JAXAや東京大学と共同で研究を進めています。


“脳神経の構造・動作原理を模倣するコンピュータの開発”

ニューロモーフィック計算の高速化と応用

人間の脳は少ない学習量でも将来の予測や即時の判断が可能であるという最先端の機械学習・人工知能技術でも太刀打ちできない高度な情報処理がなされる一方で、消費電力が20ワットで体積は1リットル程度と最新のAI向けコンピュータと桁違いの情報処理効率を持つことが知られている。そこで、脳の向上や機能に学んだ超高効率なコンピュータを目指し、ニューロモーフィック計算(脳型計算)の処理に特化した専用のハードウェアデザインとそのFPGAへの実装やスーパーコンピュータ富岳との協調動作に関する研究を理化学研究所計算科学研究センターと共同で進めていります。


“高エネルギ効率だがエラー発生確率が高い次世代不揮発性メモリの活用を目指した誤差に耐性のあるコンピュータに関する研究”

ICT機器の消費電力は年々増加傾向にあり、最悪のシナリオでは2030年に全地球で発電される電力の3割を占めるとの予測もされている。そのため、コンピュータの消費電力を可能な限り削減していく技術の開発は最重要な課題である。データセンタにおけるコンピュータの消費電力の3割程度がメモリアクセスに由来するものであることが知られており、低消費電力な新奇メモリデバイスの開発することに加え、不揮発性メモリの利用や処理の局所性を活用したCPUとメモリ間のデータ移動の削減によるシステムレベルでの設計を効率化することによる省電力化が急務となっている。このような背景の下、デバイス、OS、アーキテクチャの研究者が連携し、VC-MRAMを高エネルギ効率だがエラー発生確率が高い次世代不揮発性メモリとして着目し、高効率でメモリのエラー許容性のあるコンピュータシステムについて産業技術総合研究所と共同で研究を進めています。


希望する産学共同研究等のテーマ

以下のようなテーマや上記の当研究室の研究に関連する内容について、企業からの技術相談を受付しております。産学共同研究についてもご検討の際にはご相談ください。詳しい情報は、研究シーズのリンクから参照できます。

“コンピュータのソフトウェア実行性能を先進的なコード変換技術により劇的に改善します ~メモリデータフローの最適化を中心としたプログラム高速化技術の研究~”

“システム性能の最適化を支援するツールです
       ~システムレベルでの性能品質の科学的モデリングの研究~”